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湯上がり気分で絶品アイスを。 入谷『rébon 快哉湯』は、未来へ記憶をつなぐカフェ

湯上がり気分で絶品アイスを。 入谷『rébon 快哉湯』は、未来へ記憶をつなぐカフェ

地下鉄入谷駅からほど近く、ひときわ存在感を放つ入母屋(いりもや)造りの建物がある。一瞬「銭湯だ!」と思うものの、よくよく見てみると様子が違う。看板には「rébon 快哉湯」の文字。ここは、銭湯が生まれ変わってできたカフェだ。

残すための縁がつながり、形になった

  • 昭和通りから1本入った、静かな住宅地のなか。
    昭和通りから1本入った、静かな住宅地のなか。
「快哉湯」は、明治末期に創業し長年愛されてきた銭湯。2016年にその歴史に幕を閉じたが、オーナーの願いで再活用のためのプロジェクトが始動した。建築会社ヤマムラが改修から活用・運営までを担い、当時の様子を極力残しながらリノベーション。2019年にはヤマムラのオフィスとしてスタートした。

「当社は当時、ここからすぐそばの根岸に『ランダバウト東京』というホテルを開業するところでした。その挨拶まわりでスタッフがこの場所を知ったのがきっかけです」と、カフェの運営を担う株式会社ベステイトの多田(おおた)さん。

縁がつながり、力を合わせて、ラウンジとして使用されていた脱衣所のスペースをさらに活用すべく動き出したのだ。
  • 建物は昭和3年(1928)築。
    建物は昭和3年(1928)築。
「改修の際には、オーナーさん、ヤマムラさん、そして地元の方も交えながら、どのように活用していくかすごく話し合われたと聞いています。ベステイトとしても、地域の人がくつろげる場所として何がいいかを考えて、銭湯と同じように老若男女だれでも入りやすいカフェという形になりました」。

そうして、カフェ「rébon 快哉湯」が2020年にオープン。コロナ禍初年という逆風吹き荒れるタイミングだが、近所の方がテレワークのために利用することが多かったとか。

「客層はオープン当初からかなり変わりました。外出のハードルが下がってからは、観光客、なかでも最近は海外からのお客さんがかなり多いですね」。

活き活きとした銭湯の面影があちこちに

  • 「快哉湯」の文字の入った立派な時計も。
    「快哉湯」の文字の入った立派な時計も。
  • 年季の入った体重計。
    年季の入った体重計。
  • 木札の鍵もしっかり現役。
    木札の鍵もしっかり現役。
店内へは、銭湯時代と同じように入り口で靴を脱いで下駄箱に入れてから。「女」という文字が残ったガラス戸を開けると、そこは脱衣所……いや、脱衣所だった空間。予想以上に銭湯の面影が残っていて、テーブルや椅子が並んでいる光景がむしろ不思議に感じるほどだ。

男女の脱衣所を仕切る壁、番台とそこに出入りするための階段、体重計、荷物入れのカゴなど、名残はそこかしこにあって眺めてまわるだけでも飽きない。
  • 思わず天井を見上げたくなる浴室の空間。
    思わず天井を見上げたくなる浴室の空間。
  • 坂本はこの周辺の旧町名。
    坂本はこの周辺の旧町名。
  • ペンキ絵は銭湯絵師・早川利光さんの作品。
    ペンキ絵は銭湯絵師・早川利光さんの作品。
また、ヤマムラのオフィスになっている浴室スペースも見学可能。こちらは男女の仕切りを取り払ったひとつの大きな空間になっていて、2つ並ぶペンキ絵には圧倒される。じっと見上げていると、カポーンというあの音が聞こえてきそうだ。

元銭湯ならではのスイーツやドリンクも

  • メニューはカウンターで注文する。
    メニューはカウンターで注文する。
この店の看板メニューは、アイスクリームと自家焙煎のコーヒーがセットになったマリアージュプレート。5種類あるアイスクリームに、それぞれ相性のいいコーヒーがセレクトされている。

アイスクリームは、湘南のみかんや小田原のキウイなど、つながりのある農園から直送されるフルーツを使ったものなど、素材を大切にしたラインナップ。なかでも、近年加わったのがミルクアイスとエチオピアのマリアージュだ。

「銭湯といえば牛乳のイメージがあったので、ラインナップに加えてみました。エチオピアは華やかな香りがあるので、よく合いますよ」と多田さん。
  • ミルク&エチオピア(1,000円/税込)。
    ミルク&エチオピア(1,000円/税込)。
  • 焙煎機もなかなかの年代物だそう。
    焙煎機もなかなかの年代物だそう。
ミルクアイスは、さっぱりとした甘みがくせになりそうなおいしさ。自家焙煎の豆をハンドドリップで淹れるコーヒーと交互に口に運ぶと、あっという間に平らげてしまう。

店内には焙煎機も置いてあり、元銭湯の空間には異質なはずなのに、なんだかよくなじんでいる。実際、焙煎機とは知らないお客さんが「あれはボイラーですか?」と訊ねることもあるとか。
  • 自家製コーヒーゼリーオレ(650円/税込)。
    自家製コーヒーゼリーオレ(650円/税込)。
また、多田さんの隠れ推しメニューだというのが、自家製コーヒーゼリーオレ。その名の通り、ミルクにコーヒーゼリーを浮かべたものなのだが、そのミルクには自家製のレモンシロップが入っているのだ。栃木県の「レモン牛乳」のような甘いレモン風味で、コーヒーゼリーの食感も楽しい。

ほかにも、紅茶やハーブティー、黒糖ミルク、ホットチョコレートなどよりどりみどりで、どんな気分の日でも応えてくれる充実っぷり。

さらに、キャロットケーキやレモンケーキなどの焼き菓子、スープがメインのランチプレートなど、おなかも満たせるメニューがそろう。今後はランチメニューも充実させたいというから、どんなメニューが加わるか楽しみだ。

街の一角に、いつまでも記憶が生きている

  • 店名の「rébon」は英語の「reborn」から。
    店名の「rébon」は英語の「reborn」から。
店内を眺めながらアイスやコーヒーを味わっていると、落ち着いた開放感に満たされる。靴を脱いでいるからなのか、銭湯ならではの天井の高さがあるからなのか。いや、それらが醸し出す銭湯ムードによって、お風呂上がり気分を追体験しているからかもしれない。

「お客さんには飲食だけではない”体験”をして帰っていただきたいので、興味を持ってくださる方には店のストーリーをお話しするようにしています」と多田さん。逆に、年配のお客さんから銭湯について教えてもらうこともあるとか。

「かつて快哉湯に通っていた人から『ここが残ってくれてうれしい』と言ってもらえると、自分たちのやっていることには意義があったんだなと思います。今後はより地元に寄り添うカフェとして、お祭りに足を運んだり、イベントを開催したりしたいです」。

銭湯の空間を残し、誰でも過ごせるカフェにしたことで、記憶を分かち合える場としても機能している「快哉湯」。湯上がりのような幸せ気分を味わいに行こう。

※本記事は2025年6月時点の情報です。最新の情報は公式サイト、公式SNSをご確認ください。
コラム
「rébon 快哉湯」

住所:〒110-0004 台東区下谷2-17-11
アクセス:地下鉄入谷駅4番出口から徒歩2分
TEL:03-5808-9044
営業時間:10:00~18:00
定休日:不定休
公式サイト:https://www.rebon.jp/
公式SNS:https://www.instagram.com/rebon_kaisaiyu/
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コラム
ライター/中村こより

1993年東京生まれ、北海道育ち。坂のある街に憧れて2020年から谷中在住。 街を歩いたりお店の話を聞いたりする記事をよく書いています。 好きなものは凸凹地形、地図、路上観察、夕立。

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